
KUON短歌コンテスト2025
結果発表!
この夏、京都大学同窓生向けサービス「KUON」の登録者様を対象に開催したKUON短歌コンテスト2025。
「自由」、「紅」、「京」という作品テーマのもと、現役学生から名誉教授までたくさんの方から思いのこもった作品が寄せられました。
本審査をつとめた審査員も、京大ならではの豪華な顔ぶれ。厳正な審査の結果、優秀作品が選出されました。
ホームカミングデイにあわせ、受賞作品6首のほか、一次審査を通過した40首を初披露!ホームカミングデイ当日の展示サロンでも、入賞作品と京都大学書道部がコラボした特別作品を展示します。ぜひご覧ください。
概要
| 応募総数 | 56首 |
|---|---|
| 募集期間 | 2025年7月1日~9月21日 |
| 審査員 |
島田 幸典 氏(法学研究科 教授) 柴田 悠 氏(総合・人間環境学研究科 教授) 永田 紅 氏(農学研究科 研究員) 石橋 真央 氏(教育学部4回生) |
審査結果
大賞
31メートルまでは許された
自由に包まれ光りたかった
山根 千穂
作品背景
学生時代の自由、京大のもつ自由、建物に許された高さという自由……その中で光るにはまだまだ未熟で、だけど光りたくてたまらなかった院生時代を懐古しながら作歌しました。
選評
学生時代をまぶしく思い出す一首。「自由」は際限のないものではなく、制限のある中でこそ輝くものであったということが、31メートルという建物の高さ制限にからめて詠まれている。京大の時計塔は約30メートル。短歌にも、31文字という制限がある。「許された」範囲内にあるときの居心地のよさと、それを振り切り、より高いところへと飛び立ちたい憧れと。若い頃に誰もが抱く、何者かになりたい、何事かを為したい、という思いがありありと甦り、「光りたかった」が切なく甘美に響く。
(永田紅)
大賞
上京を控えた手には渇水の
夏に実りし祖母の丸茄子
いでちゃん
作品背景
ツヤツヤとした丸茄子は毎日たっぷりと水をやらなければ育ちません。祖母は、手間暇かけて実らせた茄子を、故郷を離れて上京する決意をした私に惜しげもなく持たせてくれました。
選評
茄子を育てるには多くの水が要る。その茄子が「渇水の夏」に実ったことは、祖母が惜しみない手間と愛情を注いで茄子を育てたことの証だ。結句に置かれていることからその立派さが伝わる「祖母の丸茄子」は、祖母自身の力強さと愛情の象徴でもあるのだ。そしてその茄子は今、上京を控えた主体の手にある。自らの進路に向けて進む主体に、祖母は、茄子を手渡すことを通して、生命力や愛情を手渡したのだろう。茄子と祖母の力強さが伝わる歌だった。
(石橋真央)
優秀賞
鱈の身が西京味噌に馴染みゆく
大雪の降る一晩をかけ
武田 歩
作品背景
凍えそうな夜、鱈の身が京都の名産である西京味噌に一晩をかけて馴染んでいく間に、京都の町も一晩をかけ大雪に馴染んでいく。
選評
鱈の西京漬を作っている。一晩寝かせて魚の身に味をなじませる。「大雪」から厳しい寒さが想像される一方、だからこそ西京漬の甘みや旨みがかえって引き立つ。上の句では各句の頭にア段の音を配し、ゆったりとした調べを奏でる。冬の夜の時間の経過を、言葉にすることでじっくりと味わうかのようである。西京は東京にたいして京都を指す。題の使い方にも工夫がある。
(島田幸典)
佳作
知床の空を見上げて囀るは
紅き翼のギンザンマシコ
せうれう
佳作
紅の立葵咲く庭先に
村人の声響く飯舘
青草 楽士
佳作
上高野八瀬の小川に足ひたし
スイカをくえば僕は自由だ
金廣 耕佑
一次審査通過作品
京大の熱帯雨林で子どもたち探検家になる博物館かな
うっちー
語らえば夜空指しつる時計台由なきゆえに自ずからよし
悠久休暇
辛き世に生きる理由を見つけたり笑う赤子の紅き頬ぺた
金廣 耕佑
わが下に生れしが最後この草もゲノム編集されて紅づく
容量谷不作男(きゃぱたにつくらずを)
グミ食べる?孫には甘いじいじかな紅葉見えぬな京大病院
秋の北部の臭いが恋しい
久方の京の疎水の上る瀬にすっぽんの影またも逢いけり
えべっさん
京都からちっとも移住ができません鴨川清し比叡は蒼し
金廣 耕佑
選びたる道の険しさ越えゆけば自由の光揺るがずに照る
あっちゃん
自由というテーマで縛られることの踏みし慣れにし鴨川のはた
聞こえる程度の独り言
茜さす鴨川デルタきらめきて京から東へ今日発たんとす
あんじぇら
自由というくさりに縛られぼうぜんとしていた私自由研究
くろくろ
丑の刻ひめた想いを抱きしめてくれないの月写しとどめる
くるくる
ここの列車に自由席はございませんみなさんお盆は帰ってください
聞こえる程度の独り言
いにしへの京の都の山、川はけふも心で輝きぬるかな
今日も京都で一興
京活きる抹茶と共に今日生きる辛い人生光一筋
まろ
幕上がり馬に微笑む君の目に紅染まるきょうの明け方
まろ
百日紅残暑のなかで高々とピンクに染まる北大路かな
うっちー
古の京をしのぶ伝もなし山河はあれど国破れけり
金廣 耕佑
「好きにしろ」漏れ出た言葉切なくてそれは自由ではないそうつぶやいた
月子
古希過ぎて自分探しの旅は今紅には及ばなぬ鴾色の空
佐竹 笑生子(しょうこ)
響くベル熱い放送閉まるドア今日は戻れる二十歳の夜に
ガグビー
渋沢の足跡みつけひも解けば京と神戸に楠公坐す
せみまるこ
学ぶとも遊ぶともまた我次第自由の重み知りし春の日
あんじぇら
夏休み自由を求め涸沢のバイトに励んだ学生の日々
NK細胞
牡丹咲く色は紅母の愛植えた母逝き香る優しさ
はなちゃん
ハマナスの紅ほころぶ花園をヒバリ囀り天に羽ばたく
せうれう
汗滝る真夏の陽々に照らされて京の都の浴衣涼しげ
朗
繰り返す同じ日々にも光あり心は自由飛び立つ想い
ハナちゃん
叶えたい私の願い諦めず京の月を愛でるまで
ハナちゃん
先達の知恵の言の葉敷き詰めて紅もゆる哲学の道
楢野鹿の子
京の道紅色の光射し往くも自由還るも自由
やまだ
世の流れ人の景色は変われども幾世も変わらぬ京のいとなみ
学人
京の夏流れる汗がポタポタとタオルで拭きつつ机に向かう
NK細胞
紅の空を見上げて人生の終わりを笑って過ごせるように
NK細胞
懶惰なる自由は捨てつわれゆかん学び挑める自由の下に
容量谷不作男(きゃぱたにつくらずを)
紅の頬の熱量秘めつつも自由を謳え京のこの地に
平鮎
涙拭き山から見れば鳶低し自由の翼私はどこへ?
金廣 耕佑
時計台若き母が問う自由って学問で遊ぶ平和の青春
核詩
秋の日は昼を覚えず落ち行けど夜に起きたれば京紅
悠久休暇
同期会Zoom画面の整列友京八つ橋の香り漂う
核詩
